臨終

臨終に際しての心得

 突然やってくる臨終の時。遺族には悲しみの中で行わねばならない様々な儀式や手続きがあります。周囲の力も借りながら速やかに行いましょう。

危篤の知らせ

 医師から危篤が告げられたら、三親等までの近親者や本人と親しかった友人、知人に連絡を入れます。緊急の連絡にあたるので深夜、早朝でも失礼にはなりませんが「夜分(朝早くに)恐れ入りますが」と言い添える配慮をしましょう。
 連絡の内容は簡潔で手短に話します。自分の名前を名乗り、当人との関係と当人が危篤であることを伝え、来訪を希望されたら病院名と部屋番号、病院もしくは自分の電話番号を申し伝えます。電子メールでの連絡は相手がすぐにメールチェックしなければ伝わりませんので、電話もしくは電報のほうがよいでしょう。
 危篤の知らせを受けた側は、すぐに駆けつけます。遠方からの来訪で香典を持参する場合は人目に触れないようにします。

写真提供:大心堂

写真提供:大心堂

臨終のとき

 自宅、病院のいずれで最後を迎えるにしても、医師による死亡通知をもって法律上の死亡が認められます。医師が臨終に立ち会っていない場合はすぐに医師を呼びます。医師には死亡診断書の作成を依頼します。
 臨終を告げられたら家族やその場に居合わせた人が「末期の水」を取らせます。これは「死に水」ともいわれる儀式で、死者の蘇生を願うとともにあの世でのどが乾かないようにという意味を込めて行います。釈迦が臨終のときに水を求めたという伝承に由来しますが、この儀式はどの宗教でも関係なく一般的に行われています。割り箸の先端にガーゼでくるんだ脱脂綿を付けて水を含ませ、故人の唇を湿らせます。

湯灌

 湯灌とは死者が冥土へ旅立つ前に体を清めることをいい、かつてはぬるめのお湯で行っていましたが、現在ではアルコールを浸したガーゼで体を拭き清めます。湯灌は病院や葬儀社で行うことが一般的ですが、希望すれば遺族も手伝うことが可能です。
 湯灌が済むと遺体に死化粧を施します。男性は髭を剃り、女性にはおしろいやほお紅、口紅などで薄化粧をします。病気で顔がやつれていても死化粧を施すことにより、安らかな顔で弔問客との対面ができるでしょう。

自宅で臨終を迎えた場合の遺体の処理

 自宅で看取った場合はすぐに医師を呼び、死亡確認と検視をしてもらうとともに死亡診断書の作成を依頼します。医師が死亡診断書を書くまで、勝手に遺体を動かさないようにしましょう。

病院で臨終を迎えた場合の遺体の処理

 病院で亡くなった場合は司法解剖は必要ありません。家族が病室にて末期の水を取ります。その後院内の霊安室に移送され、葬儀社が決まったら通夜を行う自宅もしくは葬儀会場へ搬送を依頼します。なお、遺族が搬送する場合は死亡診断書の携行が必要となります。搬送前に病院から死亡診断書を受け取り、支払いも済ませておきます。

事故死・変死の場合の対応

 交通事故や自殺、孤独死、他殺などといった変死の場合、警察に連絡をします。警察による検視に次いで監察医による行政解剖が行われ、死因が確定されると「死体検案書」が作成されます。これが通常の「死亡診断書」にあたるもので埋葬許可を得るのに必要です。
 遭難して遺体が確認できない場合は7年の期間を経て失踪宣言を行い、「認定死亡」とする制度があります。

伝染病で死亡したとき

 法定伝染病で死亡した場合は遺体を自宅に搬送することができません。
 遺体は病院の霊安室で通夜と告別式を行い、火葬します。葬儀は後日あらためて行います。この場合感染のおそれがあるため、湯灌など遺体の処理は病院に任せます。

臓器提供・献体

 故人が臓器提供や献体の意思を示していたことが確認された場合は、危篤状態の時に医師に知らせ、登録していた団体へ早急に連絡をとります。臓器提供は死亡後6時間以内に臓器の摘出を行うため連絡は一刻も早く、迅速に行う必要があります。なお、ドナーカードがあっても家族の同意がない場合は無効となります。
 献体は医科大学で医学解剖の実習や研究に役立てます。生前故人が献体の申し込みをしていた場合は、献体協会もしくは医科大学へ連絡をすると遺体を引き取りに来ます。遺体は大学のほうで荼毘に付され、約1年〜3年後に遺骨となって遺族のもとに戻ります。

死亡届の提出

 「死亡届」は法律の定めにより、死亡を知った日から7日以内に役所の戸籍係に提出をすることになっています。死亡届がない場合「死体火葬許可証」の交付ができず火葬を行うことができません。
 死亡届と死亡診断書は1枚の用紙になっています。病院や役所にも用紙がありますので医師に記入してもらうとよいでしょう。
 遠方で亡くなった場合は、現地の役場に届け出て火葬を行い、遺骨を持ち帰るのが一般的なケースです。
 届け出は夜間や休日を含め、24時間受け付けています。死亡診断書のほかに、届け出人の印鑑を用意します。届出人は①同居していた家族②同居していない家族③親族以外の同居人の順に葬臨終義務を負います。
 火葬を行うと「死体埋葬許可証」が交付されます。納骨にはこの「死体埋葬許可証」が必要になります。
 一連の手続きは葬儀社が手続きを代行することも可能です。

寺への連絡

 菩提寺がある場合は死亡後速やかに連絡をとり、葬儀の日取りと場所の手配を行います。その時点で日程や場所が未定でも戒名と位牌のお願いは先にしておきます。

事故死・変死・伝染病で死亡した場合は

 事故死や変死の場合は、遺体には触れず110番に電話します。
 行政解剖か司法解剖の後、死因を確認してから監察医から「死体検案書」が発行されます。これは死亡診断書に相当し、埋葬許可に必要になります。
 また、法定伝染病(コレラ、赤痢、腸チフス、パラチフス、痘瘡、発疹チフス、しょう紅熱、ジフテリア、流行性脳脊髄膜炎、ペスト、日本脳炎、ポリオ)が原因で死亡した場合は、遺体を自宅に連れ帰ることができません。
 この場合は病院の霊安室で通夜と告別式をすませて火葬にし、葬儀はその後で行います。また院内感染やB型肝炎などで死亡した場合は、湯灌等のケアは専門家に任せたほうがよいでしょう。


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