那珂川町長インタビュー 大金 伊一 町長

山里から新ブランド

古くからの文化と那珂川に代表される自然が息づく那珂川町。6割を山林が占めるが、「八溝ししまる」「温泉トラフグ」など、この自然を資源にした新たなブランドも生まれた。都市との交流を図りながら、定住人口の増加に力を注ぐ。

自然や歴史文化、温泉、楽しみはいろいろ
■まず町の概要をお話しください。
大金伊一町長

大金伊一町長

 平成17年10月に旧馬頭町と旧小川町が合併して那珂川町が誕生しました。奈良、平安時代の役所跡である那須官衙が残り、町の中心部を那珂川が流れる歴史と自然が豊かな町です。産業は農業が中心で、水稲、施設園芸、畜産などが行われていますが、中山間地域なので耕作面積が少なく、大半が兼業です。観光面では自然、歴史文化、温泉などのほかゴルフ場が5つあります。観光資源のネットワーク化と、恵まれた自然を生かした都市との交流を通して人口増を図りたいと思っています。

ユニークな美術館 おいしい食べ物も
■町で自慢にしたいところはありますか。

 清流の那珂川が中心部を流れ、アユ釣りの名所です。農産物直売所には、新鮮な野菜や山菜などが並んでいます。文化面ではいくつかの資料館や美術館があります。「なす風土記の丘資料館」には、縄文から奈良、平安時代にかけての壷などの資料が展示されています。「馬頭広重美術館」は、青木藤作さんが収集した広重の版画と肉筆画を中心に、孫の青木久子さんから寄贈を受けて開館しました。世界的に有名な建築家、隈研吾さんが設計した建物も有名です。このほか、絵本作家のいわむらかずおさんの「いわむらかずお絵本の丘美術館」、廃校を利用して作品を展示している「もうひとつの美術館」もあります。

■食べ物もおいしいですね。

 まず八溝そば。寒暖の差がそば栽培に適していて、栽培する人が増え、おいしいそば店も10数軒あります。また、農作物を荒らすので捕獲したイノシシを加工し、温泉街や道の駅などで町のブランド品として提供しています。これが「八溝ししまる」です。肉のほか丼ものも好評です。「温泉トラフグ」は、町内に湧出する温泉が海水濃度に近く、これでトラフグを養殖しているのです。温泉水で養殖すると成長が早い。さらに事業拡大を目指していて、特産物になればと期待しています。

定住人口増加へ 菜園付き分譲地を開発
■今、まちづくりで特に力を入れていることを教えてください。
那珂川町庁舎

那珂川町庁舎

 定住人口を増やすため家庭菜園もできる「農ある田舎暮らし高手の里」という定住促進の分譲地を開発しています。町外から定住希望する人に、住宅用地として20年間無償で貸与します。高齢者の利便性向上のため、デマンドタクシーの運行も始めました。安心快適な生活基盤の整備については、災害や緊急事態発生時に対応するため、デジタルと光ファイバーに切り替えたケーブルテレビを活用し、音声告知放送を野外でも聞くことができるように整備を進めています。これは独居老人の見守りなどにもに活用できます。

■中長期的にはどのような施策に取り組みますか。

 約6割を占める山林を利用できないかと考えています。現在、新たな製材工場の操業が予定されています。また、高齢化が進み地域の機能が低下していますので、ボランティア保険の充実、地域活動への補助、コミュニティーリーダーの育成など、協働による地域づくりのための環境整備を行います。さらに新しいエネルギーを活用した循環型社会を目指すため、太陽光発電設備の導入促進や、バイオマス活用推進基本計画の策定に取り組んでいます。既に太陽光発電は保育園に導入し、太陽光発電を設置する家庭に補助金も出しています。生ごみや畜産業で発生する牛糞などの利用も考えています。

産学官連携でさらに新商品を開発
■町民を元気にするためには何をしていますか。

 基幹産業である農林業の生産規模の充実を行っています。大型機械が入らないとこれからの農業は難しいので、大変ですが基盤整備はしなくてはなりません。それから産学官の提携によるブランド開発促進ですね。温泉トラフグやイノシシの肉の生産などに加え、最近マコモダケ栽培が始まり、手作りハム、アユの加工品、小砂焼の窯元も10軒近くあります。さらに定住人口が増えてくれないと元気が出ません。高手の里を積極的に広報宣伝するとともに、町内には空き家もあるのでぜひ、当町に定住していただきたいと思います。

■企業への施策をお話しください。

 企業立地優遇制度の創設など、支援体制の整備も進めています。商工会の役割も重要なので連携も強めていきます。また、新宿平工業団地の誘致活動を積極的に進め、工業団地以外の引き合いにも迅速に対応します。既存の立地企業には企業訪問などの活動で定着をお願いしているところです。

切手でバードウォッチング

宗谷とペンギン
(1957年発行 日本)
 ペンギンは南半球だけに生息する鳥類で、日本近海には生息していません。しかし、日本もペンギンをあしらった切手を何種類か発行しています。その多くは、南極観測に関する記念切手です。
 初めて日本の切手にペンギンが登場したのは1957(昭和32)年の地球観測年を記念して発行した初代南極観測船「宗谷」とコウテイペンギンのデザインでした。

宗谷とペンギン

 南極観測船「宗谷」は、敗戦の影響がまだ残っていた時代に、南極計画を復興の糸口にしたいという国民の期待を背負って、到達不能といわれた南極へ第1次観測隊を送り届けました。それを記念して発行された切手です。


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