宇都宮市長インタビュー 佐藤 栄一 市長

住めば愉快だ宇都宮

地域が持つよさを発信するブランド戦略を展開している宇都宮市。ブランド・メッセージ「住めば愉快だ宇都宮」も浸透しつつある。さらに「ネットワーク型コンパクトシティ」によって、少子高齢社会でも持続可能な新しいまちづくりを推し進める。

地域内の公共交通を充実、それらを相互につなぐ
■まちづくりで力を入れていることを挙げていただけますか。
佐藤栄一市長

佐藤栄一市長

 宇都宮の強みを育て、発信する「ブランド戦略」を展開中です。「住めば愉快だ宇都宮」のブランド・メッセージを定め、身の周りのさまざまな宇都宮のよさ、愉快だと思うことを見つけていただいて、市民全体で発信しようという戦略です。ギョーザ、ジャズ、カクテル、妖精のまち、農業など、いろいろな分野でブランド化も進んできました。
 現在、「ネットワーク型コンパクトシティ」づくりに特に力を入れています。39の自治会連合会を基礎にした40前後の地区の中に、銀行、郵便局、福祉施設、スーパーなどが確保され、日常生活に困らないまちにしていきます。さらに、車の運転ができなくても移動が可能となるよう、地域内交通を導入し、それらを路線バスや新たな公共交通等でつなぎ、ネットワーク化していきます。
 こうして、地元の歴史や住んでいる人の考えなどが十分に配慮されるコンパクトなまちをつくりたいと思っています。
 清原地区などでは、既に地域内交通が運行されています。これらを路線バスなどと結び付ければ、市内どこでも移動できます。また、公共交通と車が共存する社会構築に向け宇都宮環状線などの道路網を生かしていくことも大切です。
 あわせて、中心市街地では、魅力や特色ある機能を集め、出かけたくなる、歩きたくなる空間とすることで、日常の生活を含め、外出が増え、健康も維持され、ひいては医療や介護に要する費用の低減も期待できます。そうした意味では、公共交通全般を福祉的な政策と捉えることもできると思います。

自転車活用したまち、さらに推進
■観光面ではいかがでしょうか。

 「宇都宮城址公園は、市民の心の拠り所として再現をしました。ギョーザなどで来ていただける方が年々増えています。史跡・遺跡巡りをセットにしてご案内する活動などがボランティアの方々を中心に始まっていますので、大きく育てていきたいですね。

■「自転車のまち」を進めていますね。

 コンパクトシティの中では自転車の役割も大きいのです。公共交通の1つであり、何より健康増進につながります。宇都宮の宝であるジャパンカップサイクルロードレースは、アジア最高峰の大会に位置付けられ、世界の一流選手が集います。また、昨年初めて大通りで開催したクリテリウムで、市民の皆さんに分かりやすさを示すことができたと思いますので、これらを織り込んで自転車のまちづくりを進めていきます。

環境対策や子育て支援住みやすい市に
■暮らしに直結した施策として手がけていることをご紹介ください。
宇都宮市庁舎

宇都宮市庁舎

 環境面では高効率給湯器や太陽光発電に対する補助を行っており、予算が追いつかないほどの申請があります。環境にやさしい車の購入補助は、地域、経済にも大きな効果がありました。環境に関する施策に今後も力を入れます。子育ては、「まちづくりは人づくり」と考え、人間力をはぐくむ政策を進めています。全小中学校に冷暖房設備を配置し、小学校6年生までの医療費は現物支給方式で無料。妊産婦の医療費助成や不妊治療費への助成も全国トップクラスです。民間の調査では宇都宮市は子育てにやさしいまちの第2位という評価を受けています。住みよさでも50万人以上の都市の中では第1位になりました。

少子高齢化の中持続可能社会を築く
■中長期的にはどのような展望をお持ちでしょうか。

 少子高齢化の中でも、持続可能な都市にしていきたいと思います。住みやすいまちをつくるとともに、病気になりにくい、介護を受けずに済む社会を構築する必要があります。そのためにもネットワーク型コンパクトシティによって、自分の地区の中で日常生活が完結でき、外に出やすい環境をつくりたいと思います。その前提となるのは財政です。行財政改革を進めて6年目に入りましたが、5年間で約100億円の経費を縮減しました。職員数も500人を削減し目標の3500人体制になりました。また、まじめに生活をしている人が報われる社会をつくる意味で税金の収納対策にも力を入れています。

■中小企業、大企業を含めて企業の振興策はいかがですか。

 企業の誘致策として土地の取得代、設備の設置に補助をしています。また、企業の皆さんに宇都宮で生産研究を続けていただくために、増設や機械の導入、土地の確保などの補助も併せて行っています。さらに、宇都宮の縁の下の力持ちとして支えていただいている中小企業の皆さんには、資金融資制度と雇用の助成についても、継続して取り組んでいます。
 宇都宮でいただいた皆さんからの貴重な税金は、宇都宮の中で循環できるような社会をつくりたい。そして自信を持ち、明るく、愉快だと思っていただける活気あふれるまちにつなげていきたいと思っています。

■宇都宮全体として自慢できることをあらためて挙げていただくとすれば、どんなところになるでしょうか。

 先ほど申し上げたように、外部に胸を張れるようなランキング指標がいろいろあります。それをもとにして言えば、宇都宮の底力はまだまだあると思います。自然災害も少ない土地です。
 災害が少ないからといって安心はできませんが、マンパワーの面からみても、消防団や各地区の皆さんの自主防犯、防災などのサークルが、しっかり全地区に出来上がっています。宇都宮市にとってはこれは大きな強みだと思います。
 いろいろな施策を行政がトップダウンで行う時代はもう終わりました。市民の皆さんが行政に対してまちづくりを提案する、あるいはアイデアを出す。そして一緒になって汗をかいていくことが重要です。
 もちろん汗の量は、われわれ行政の方が市民の皆さんよりも多くなくてはなりませんけれども。そういう点も宇都宮としては形が整ってきました。これも自慢ができる大きなものだと思います。


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