那須烏山物語

八溝山系の豊かな緑を背景に清流那珂川と荒川が流れる。江川にかかる龍門の滝はナイアガラの滝を思わせる。里山に美しい田園風景、東山道をはじめ市内に点在する遺跡群、450年の歴史がある山あげ祭とすべてが誇り。新たな都市づくりに向けて結合した力は確かな飛躍を約束する。

見る

 7月の第4土曜日をはさんで3日間行われる山あげ祭は、国の重要無形民俗文化財に指定されていて、まさに市の看板。街中で所作狂言(おどり)を披露する。山は舞台背景で、大山、中山などが配置され、進行に合わせて150人を超える若衆が一瞬にして背景を変化させる。450年の伝統を誇る豪壮な野外劇で出し物は「将門」「蛇姫様」など。初秋には松原寺境内で国の選択無形民俗文化財の①塙の天祭がある。災害除けと五穀豊穣を祈願して子どもたちの念仏踊りなどで盛り上がる。郷土芸能では森田と下境・興野の獅子舞、熊田や宮原の太々神楽などもある。自然では、幅65メートル、高さ20メートルの②龍門の滝が必見。龍門ふるさと民芸館は龍門の滝を展望するほか、滝にまつわる伝説や烏山の民話などを紹介する。推定樹齢350年の西山辰街道の③大桜(ヤマザクラ)は県の名木百選。みなみなすタウンイルミネーションは、ボランティアの手で約25万球のLEDが冬の夜を彩る。クリスマスイベントもある。

塙の天祭

塙の天祭

龍門の滝

龍門の滝

大桜(ヤマザクラ)

大桜(ヤマザクラ)

学ぶ

 高瀬の荒川沿いの地層から発見されたクジラの化石は1000万年前のヒゲクジラ類といわれる。厩久保遺跡は東山道の道跡。①長者个平官衙遺跡は奈良・平安期の古代役所跡で源義家が奥州討伐の帰途に焼き滅ぼしたという長者伝説が残され、焼き米が出土する。横穴墓に十三仏が刻まれている曲田横穴墓や五十余の穴がある小志鳥横穴墓群は7世紀ごろに造られたとされる。八高山山頂の烏山城跡は那須資重が1417(応永24)年に築城した山城で、森田地区の森田城跡は、那須光隆が築いた難攻不落の竜崖城。空堀や土塁、石垣(烏山城跡)が残る。②山あげ会館は映像や模型によって山あげ祭の様子を紹介する。龍門の滝近くの③太平寺は、坂上田村麻呂が蝦夷討伐の際に建立して戦勝を祈願、後に慈覚大師円仁によって滝尾山正眼院太平寺として開基された。龍が巻きついたとされる仁王門が当時をしのばせる。境内には、故川口松太郎の小説で知られる蛇姫様の墓もある。

長者个平官衙遺跡

長者个平官衙遺跡

山あげ会館

山あげ会館

太平寺

太平寺

 2005(平成17)年に南那須町と烏山町が合併して誕生した。人口規模では県内の市で最少。県東部で茨城県境に位置する。西部は高根沢町、北部は那珂川町に接する。那珂川左岸は八溝山系に属し、右岸の丘陵地帯は荒川や江川が貫流する市街地を含む里山地帯が広がる。国道293号が市北部を東西に、国道294号は市

烏山の山あげ祭

烏山の山あげ祭

中心部を南北に走る。JR烏山線が東西に走り、市内に5つの駅を持つ。県都宇都宮市からは30キロ余だが、宇都宮駅まで約1時間で接続する。農林水産業主体だが、2つの工業団地を持ち、なお企業誘致や新事業創出を進めるなど商工業の振興にも力を入れる。歴史と文化を反映した伝統産業と観光産業の占める役割は大きい。

遊ぶ

 毎年8月の①いかんべ祭は、巨大野外ステージを中心に繰り広げられる多彩な催しに多くの人々でにぎわう。南那須自然休養村(東日本大震災で休業中)は、7種類の風呂が楽しめる②こぶしが丘温泉や宿泊施設、林間キャンプ場、こぶしが丘牧場、レストラン、テニスコート、遊歩道などが一体の施設。長峰ビジターセンターは周辺の動植物を紹介、天体観測施設も備える。サンライズ国見はロッジやバーベキュー広場などを備えた宿泊施設。付近には「日本の棚田百選」に選ばれた国見の棚田もあり、「日本の原風景」が味わえる。。八雲神社から城山に至る3キロの毘沙門山城山自然歩道は健康づくりに最適。大木須むらづくり推進委員会は、国蝶オオムラサキの飼育体験で地域交流を深める。③田んぼの学校志鳥倶楽部は田んぼや小川、山で子どもたちとの触れ合う催しを実施する。寿乃湯はナトリウム塩化物泉。ゴルフ場は公式戦を開催した烏山城や大金など戦略性に富むコースがそろう。

いかんべ祭

いかんべ祭

こぶしが丘温泉

こぶしが丘温泉

田んぼの学校志鳥倶楽部

田んぼの学校志鳥倶楽部

食べる

 関東を代表する清流那珂川と支流の荒川には大小5カ所のヤナがあり、香魚アユを堪能できる。農産物は豊富。国見のミカンは北限とされ、①みかん狩りでにぎわう。リンゴ、ナシ、ブドウ、イチゴも同様に農園で直接手にすることができるほか、市内に点在する11カ所の②農産物直売所で扱っていて便利。大根や白菜などの季節野菜も新鮮なものが提供される。中でも皮が薄く、甘くてホクホクした食感が特徴の③中山かぼちゃは地域ブランド品。地域の風土に合った独特のカボチャで26軒の農家が、厳格な基準で丹精を込めて作っている。そばなどの麺類も名店が多い。寒暖の差がある山間地でこそ香り高いソバが生産できるため、周辺市町と八溝そば街道推進協議会を結成して、消費拡大を進める。市は八溝そば推進事業として市内のそば処マップを製作して支援する。清酒東力士の島崎酒造は、酒造り工程や利き酒のできる酒蔵見学(要予約)を実施している。

みかん狩り

みかん狩り

農産物直売所

農産物直売所

中山かぼちゃ

中山かぼちゃ

ふるさと散歩

【民話】龍門の滝
 那須烏山市の名所である龍門の滝には、ある言い伝えが残っている。
 この滝の中段には大釜、小釜と呼ばれる深い縦穴があり、大釜には怪物がすんでいるといわれていた。滝の太平寺のお坊さんが、その姿を一目見たいと、滝の上の大岩に座って一心不乱に祈った。
 21日目の満願の日の夕方、大嵐が発生し、大釜の中から大蛇が現れ、炎のよう

龍門の滝の近くにあり、民話にちなむ展示物が観賞できる「龍門ふるさと民芸館」

龍門の滝の近くにあり、
民話にちなむ展示物が観賞できる
「龍門ふるさと民芸館」

な舌を出し、眼を火の玉のように光らせながら、太平寺めがけてのし上がって行った。大蛇は仁王門の屋根にぐるぐると巻きつき、棟の上に鎌首をのせた。長さは七巻半に及んだが、それでも尾は大釜に残っていたという。ここから龍門の滝と呼ばれるようになったといわれる。

わが街自慢の逸品

烏山手すき和紙
 市の伝統産業。明治期には多くの農家で副業として作られていたが、現在は和紙の里の福田製紙所だけとなった。良質の那須こうぞを原料とする程村紙は厚紙の至宝といわれ、国の選択無形文化財。福田製紙所が設立した和紙会館は紙すきの歴史などを伝えるほか、人形や札入れなどの製品販売もする。

烏山手すき和紙

那須烏山ものしり百科

●なすからすやま歳時記
3月 梅まつり
6月 アユ釣り解禁
7月 山あげ祭
8月 いかんべ祭、塙の天祭
12月 みなみなすタウンイルミネーション

島崎酒造どうくつ酒蔵

島崎酒造どうくつ酒蔵

●境橋
 主要地方道常陸太田那須烏山線の那珂川に架かる橋長112.5メートルのアーチ橋。
 1937(昭和12)年竣工で土木遺産に認定。
●東京動力機械製造地下工場跡
 「桜」のヒット曲で知られる佐野市出身のシンガーソングライター・河口恭吾の作品。
 第2次世界大戦末期に戦車工場として建設された。総延長600メートル。
 現在は安定した温度などから島崎酒造どうくつ酒蔵に活用。
●旧烏山病院
 1923(大正12)年に開業。半円形の窓などドイツ表現派建築の影響を受ける。
 現在は和紙会館として再生。


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